遠心クラッチの部屋
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■まずは構造の話
と言っても構造ではなく、原理・動きです。
遠心と言いましてもカブよりスクーターのクラッチのほうが遠心だと思います。しかし何故かあちらではそう特定しては言いませんがこちらではちゃんとそのように言います。こちらのクラッチの意味合いは、発進時の半クラッチの管理です。(下@)
遠心クラッチにはもうひとつの役割として、変速時の動力伝達の切断があります。当然こちらもクラッチが関係します。(下A)
@ 発進時(回転数に対応したもの)
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クラッチが全く繋がっていない |
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↓ |
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回転数に応じてウエイトに遠心力がかかり、徐々にクラッチが繋がる
(全切→半クラッチ→全通の過程) |
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↓ |
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ウエイトに完全以上に遠心力がかかる。
(完全に繋がる) |
A 変速時
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シフトペダルを踏む |
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↓ |
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踏まれたことにより機械的に強制的にクラッチが切れる
(クラッチがフリーになる) |
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↓ |
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踏まれた事によりシフトドラムが回り変速する |
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↓ |
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ペダルが戻されクラッチが繋がる |
上記2つは関連して動くわけですが、シフトペダルが優先されます。つまり回転数を上げてもシフトペダルを踏んでいると繋がらないという、遠心車に乗った事のある人間は知っている話です。
この事を理解して頂ければ分かると思いますが、上Aの最後の部分で回転数が低いとペダルが戻されてもクラッチは繋がりません。
伝達効率はスクーターと違い普通のミッション車と一緒と考えて構いません。このあたりも世界戦略車・カブの底力だと思います。
■旧型と新型の差
主に@の繋ぐ構造が異なります。
旧型はローラー状のウエイトと部品の傾斜を用いて繋いでいます。スクーターのウエイトローラーと同じ考えのものと言えます。 50と70では部品が異なり、繋がる回転数も異なります。
新型はヤジロベー型のウエイトが遠心力で外側に振られる力を利用しています。非常に画期的な構造で、そのウエイトの数の増減でクラッチミートの回転数を管理できます。ですので形は異なりますがやはりスクーターのウエイトローラーの感覚でコントロールできます。
■新型の構造
とりあえず旧型は放っておいて、見て頂きましょう。
photo1 |
photo2
(左側ウエイト部はドライバー先端) |
photo3 |
ウエイトはフリクションディスクを遠心力で押すように位置しています(photo1)。本来はこの上(手前側)にディスクがあります。
エンジン回転数が上昇すると、遠心力で手前側に押す力が働きます。つまりフリクションディスクが押され隙間が無くなり、クラッチがつながります。
ウエイトには支点となる穴が開いており、それを中心として動きます(photo3、photo4)。
写真のクラッチはは12Vカブ90用です。 |
photo4 |
新型と旧型または排気量による差ですが、フリクションディスクの摩擦面の面数(両面2枚または片面×2・両面×1)は同一ですので、容量的にはどれも同じです。バネの強さが変わります。1次減速比は同じです。
■強化の方法
強化の方法は普通のクラッチと同じように2種類ありまして、スプリングの強化とフリクションディスクの容量UPです。
クラッチはフリクションディスクの摩擦力を利用して伝達・中断をする構造です。ですので強化とは、ディスク自体の摩擦力を上げるか、ディスクを押しているスプリングの力を大きな物にしてやるか、という事になります。
スプリングはモンキー系単板強化用のものを流用する事が出来ます。ただしこれは旧型クラッチのみに出来ます。 具体的にはJUN international(ジュン・インターナショナル:PEGASUS、モンキー本舗扱い)のものが良いでしょう。 新型用が遠心強化用として販売されています。
他のメーカーが全て悪いという訳ではなく、私が確認済みであるだけです。 見極めポイントは普通鋼かバネ鋼かという点ですが、外観では殆どわかりません。 切断面で判断できるそうですが、普通には難しすぎると思います。
フリクションディスクの容量アップは専用品も流用品も無い為に厳しい状況です。ただしこの辺りのモディファイは我々が専門店に単品で再生をお願いしても新品と変わらない価格で対応頂ける部分でもあるらしく、そういう方向での強化も面白いと思います。
遠心を強化して何処まで耐えられるのか??
88cc程度が上限だと思います。馬力にして10馬力までだと思います。
もちろん使い方にもよりますが、SS−JUNの96ccというのがひとつの上限の目安でしょう。そういう意味での約10馬力です。 ですので同じ10馬力近辺でも逆にスーパーヘッド88ccなどのほうがもたないと思います。
つまり急にトルクフルに“どぱあ〜っ”と出てしまう物はきつく、下から“のわぁ〜っ”と出力されるものはまし、と言う事になると思います。
現在私の知る限りでの最強化遠心部品はJUN−IN.のキットですが、その仕様でも武川106ccはもたないようです。
■改良案(未完)
実は上記の強化策には問題点があります。と言いますのは、基本的にはカブ90用に近いものですので、発進時の回転数は高くありません。
これがどうして問題となるかと言いますと、キック→始動→勝手に発進、という事が起こってしまうのです。例えばJUN−IN.のボアアップキットでしたらアイドリング回転数は低くても燃焼が安定していて問題無いでしょうが、わたしの基準であるようなダックス70ヘッド88ccにハイカムなどですとアイドリング回転数をたとえば2000rpm以下で維持する事は困難です。何故かは項を譲るとしまして、一般的にレーシングエンジンが高めのアイドリング回転数を要求するのは必然です。
発進時の回転数はバネの強さとウエイトの量が関係しています。スクーターのセンタースプリングとウエイトローラーに似ています(余計に分からないですか?笑)。
バネは強化の都合で硬くなりますので回転数も上がります。
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あとはウエイトです。
もともと50ccには1ヶ所4個×4ヶ所=16個、70ccおよび90ccには1ヶ所7個×4ヶ所=28個のウエイトが入っています。それぞれのウエイトの品番は同じですので重量も同一です。
これを減らしてやります。
減らすと言っても抜くだけではダメで、替わりにワッシャでも入れてます。ですが相性や耐久性などなども気になりまして、結局は純正を削ってやりました。できるだけ極端な仕様にして実験と思ったのですが、1ヶ所1枚の4枚仕様は無謀かと思い、1ヶ所2枚の8枚仕様にしてみました。 |
実験ですが、まだです m(_ _)m 。暖かくなってから乗って見ようと思っています。